詩人・社会活動家の深沢レナによる第三詩集。2017年から2021年までに著者に起きたこと、旅を通して考えたことや風景、「生き延びた軌跡」や「あたたかな感触を持つ記憶」を、記録して保存しておくための、詩のとりくみ。
“聴こえてくる旋律をなぞるように
わたしは口ずさんでいる
歌うのはいつぶりだろう
誰に聴かれるためでもなく
誰のためにつくったのでもない
ただの歌
遺跡の裏側なんていう
誰のためにつくられたのでもない
誰に見られるためでもない
ただ存在しているだけの場所
それがわたしに一時の居場所を与えているように
ただ在るということが
誰かのほんの一瞬の救いにつながっているかもしれないと思うと
ただ歌を歌うという行為が
許されているような気がした”
(「遺跡の裏で」より)
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2017年から2021年までの軌跡を、詩人は詩に記憶する。旅に出かけた東南アジアでは思いもよらぬ不思議な世界に出くわした。そして今、人のぬくもりにふれ詩を刻むことによって豊かな地平を見出していく。詩人が過去、旅を経て出発を物語るこの詩集は、詩が魂に響くかという切実な問いに希望を託す。
■著者
深沢レナ(ふかざわ・レナ)
1990年生まれ。詩人・社会活動家。
第1詩集『痛くないかもしれません。』(七月堂、2017年)、第2作品集『失われたものたちの国で』(書肆侃侃房、2018年)を刊行。大学院在籍中に教員によるセクシュアル・ハラスメント被害を受けた経験から、2020年に「大学のハラスメントを看過しない会」を設立し、性暴力や構造的暴力の問題に取り組んでいる。『ヒドゥン・オーサーズ』(惑星と口笛ブックス)、『ガール・イン・ザ・ダーク』(講談社)などのアンソロジーに参加するほか、詩はオーストラリアの文芸誌 Rabbit: A Journal for Nonfiction Poetry や国際文学誌 Words Without Borders に翻訳掲載されるなど、海外でも紹介されている。動物の問題にも取り組み、絵本監修『こぎつねのママ ママのこぎつね』(現代書館、2025年)、編著『あなたと考えたい動物たちと社会のこと』(現代書館、2026年)を刊行する。
■本書より
上空では
鳶たちが鳴きながら
ゆるやかな円を描いている
スピーカーのラジオからは
今日の死者数がよみあげられる
すこしずつ海の青が濃くなって
遠くの半島にあかりがつきだす
強い風が吹いて
ああ生きてる と彼女がいう
わたしは風に奪われながら
彼女のとなりで海を聴く(「海を聴く」より)
■目次
二〇一七-二〇二一
ここから/静かな場所を求めて彷徨う/祖母の時間/ひび/固定電話/檻/安全な場所
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逃避行/治療(ヒーリング)/そのあとセブ島で聞いた話/乗り継ぎ(トランジット)〈Ⅰ〉/儀式/三人目のシャーマン/土砂降り/乗り継ぎ(トランジット)〈Ⅱ〉/遺跡の裏で/海の街/夜の海/夜明け/帰国
*
メイと/怪獣たち/海を聴く/出口
関連年表
あとがき
[版元サイトより]
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著者:深沢レナ
発行:港の人
判型:四六判/並製本/本文160頁